チームビルディングに役立つ技術

チームビルディングに役立つ技術(1)

本コーナーでは、チームビルディングに今すぐ役立てることができる技術「ほめる」について、弊社代表著作「ほめたくない部下をほめる技術」や、弊社代表の日経新聞インタビュー記事などを参考に(詳しくはリンク先をご覧ください)、解説してまいります。

【構成(目次)】

►  チームビルディングに役立つ「ほめる技術」とは(今回は、こちらです!)
►  注意点1(チームビルディングに役立てる前に)
►  ほめる技術が登場した背景
►  チームビルディング実施前の簡単なチェック
►  チームビルディングに役立つほめる技術の効果(目的)
►  チームビルディングのための「ほめる技術」
►  チームビルディングのためのさらに実践的な「ほめる技術」
►  注意点2:チームビルディング実践編

【チームビルディングに役立つ「ほめる」とは】

第一回の今回は、チームビルディングに役立つ技術である、「ほめる」とはそもそもどういうことかにつき、見ていきます。

私たちは、ほめるとは、
:長所・良いところをのばすこと
ととらえています。
これは、具体的には、成長と可能性に目を向けること、を意味します。

チームビルディングに役立つ、こうしたものの捉え方について、より詳しくご説明します。

皆さんは、「選択的知覚」という言葉を聞いたことがありますか?
私たちは、物事をありのままに見ているのではなく、外部で起きている様々な客観的な情報のうち、自分の考え方・イメージ・記憶に一致するものだけを、選択的に知覚している、という考え方です。

たとえば、子供を授かった夫婦は、急に町にベビーカーを持った人の数が増えたように感じたり、最近赤い車を買った人は、町を走る赤い車に注意を払うようになる、などの現象は、皆さんもご経験あるのではないでしょうか。

チームビルディングという観点からは、チームの状態を示す様々な客観的情報を、ありがままに見ることは意外に難しく、そのチームを見る人の認知方法に合致するような情報を選択的に認知してしまうことが多いようです。

この選択的認知は、誰しも無意識のうちに行っていることですので、これを逆にチームビルディングに役立てるために、チームのマネージャやメンバー全員が、チームの「長所・良いところ」を選択的に認知する、具体的には、チームやチームメンバーの成長と可能性に目を向けることを心がけるだけで、チームビルディングの効果を期待することができます。

なぜなら、人は自らの認識に基づいて、最適な行動を自然にとろうとします。
そして、長所や良いところに関する認知を増やすに従って、そうした点を強化する行動がおのずと引き出される行為(=ほめる)を期待することができます。

詳しくは後述しますが、こうした長所を引き出す行為には、人間関係を改善する効果(すなわちチームビルディングのうち、関係性を改善する効果)が期待できますので、認知という情報の入り口部分を意識するだけで、自然とチームビルディングに有効な言動が起きやすい環境を作り出すことができるのです。

【チームビルディングに役立つ「叱る」とは】

なお、「ほめる」と対比して、「叱る」についても触れておきます。

叱るとは、短所・悪いところを改善すること、であり、具体的には、求められる水準に足りないこと・改善できることに目を向けること(選択的に知覚すること)だと、私たちはとらえています。

その定義から考え、「叱る」ためには、求めるべき「基準」が明確である必要が出てきます。

チームビルディングの話題から少し離れますが、最近、「叱れない大人が増えた」と言いますが、その背景の一つとして、私たちの「価値観が多様化している」という点が挙げられます。

つまり、「叱る」ためには、叱る側・叱られる側の双方が共感できる、共通の価値観・基準の存在が前提として求められますので、その「こうあるべき」という姿が価値観の多様化によってなくなると、「叱る」ことが難しくなるのです。

たとえば、関東地方では、エスカレーターは左側に立って、右側を急いでいる方のために空けておくことがマナーと言われています。しかし、関西地方では、逆側に立つことがマナーと言われているといわれます。

このことの真偽はともかく、関東地方(あるいは関西地方)で、逆の側に立っている人に注意をする(できる)ためには、相手がマナーについて知っている、少なくとも共感できるだろうという推論が成り立つことが求められます。しかし、「ひょっとすると相手は関西(関東)出身で、その方にとってはそちら側に立っていることが正しいのかもしれない」と考え出すと、従来のような形で一方的に叱ってはいけないのではないか、と考え始めるのではないでしょうか。

「叱る」前提として、このような「こうあるべきという基準」の共有が求められる中、職場の価値観が多様化する中で、こうあるべきという基準の具体的な解釈の中身は、メンバーによって異なる可能性が出てきています。

チームビルディングに役立つ技術として、今後は「ほめる」を中心に見て参りたいとは思いますが、チームに「叱る」が必要な場面では、まず叱る前提として、チームとしての方針・基準が何か、ということを、メンバー間できちんと話し合い、調整・共有しておくことが求められます。

チームとして、基準・依って立つ価値観を共有することは、チームビルディングに効果的ですので、「叱る」ことができるチームとなることは、チームビルディングにとって効果的です。

今後は「ほめる」を中心に見ていくとしても、何も「ほめる」だけがチームビルディングに手段ではない、つまり「ほめる」は万能薬ではない、など注意点がありますので、次回詳しく見て参りたいと思います。

以上、今回はチームビルディングに役立つ「ほめる」のご紹介の第一回として、ほめるの定義について見て参りました。
次回は、注意点1(チームビルディングに役立てる前に)をご紹介します。